中小企業DX

医療・介護の課題をAIで解決|記録作成からシフト管理まで

医療・介護現場のカルテ記録、シフト管理、予約対応、申し送り、研修の5大課題をAIで効率化する方法を解説。現場の負担を軽減し、ケアの質を向上させる実践ガイド。

2026-04-10·11 分·Tech.st編集部

医療・介護業界の現状と深刻な課題

医療・介護業界は、日本が直面する最も深刻な社会課題のひとつです。厚生労働省の推計によると、2025年時点で介護人材は約32万人の不足、2040年には約69万人の不足が見込まれています。医療分野でも、医師の時間外労働上限規制(2024年4月施行)により、限られた人員での効率的な業務運営が不可欠となっています。

こうした状況の中、現場スタッフは「本来のケア業務」以外の間接業務に多くの時間を費やしています。ある調査では、看護師の業務時間の約40%が記録・書類作成・連絡調整などの間接業務に充てられているとの結果も報告されています。

医療・介護が抱える5大課題

課題領域具体的な問題現場への影響

カルテ・介護記録記録作成に1日1〜2時間残業の主因、ケア時間の圧迫
シフト管理作成に月10〜15時間公平性の担保が困難、属人化
予約・問い合わせ対応電話対応で業務が中断1日30〜50件の電話対応
申し送り・情報共有口頭伝達による情報漏れインシデントの原因に
研修・教育OJT依存で標準化できない新人の離職率が高い

5つの課題とAI解決フロー

1. カルテ・介護記録:音声AI入力で記録時間を半減

Before(従来のやり方)

  • 業務終了後にPCでカルテ・記録を入力
  • 1件あたり10〜15分、1日に10〜20件を記録
  • テンプレートはあるが、自由記述部分に時間がかかる

After(AI導入後)

  • ケア中やケア直後に音声で記録内容を入力
  • AIが音声を自動でテキスト化し、所定のフォーマットに整形
  • 記録時間を1件あたり5〜7分に短縮(50%削減)

音声入力AIは、医療・介護特有の専門用語にも対応した辞書を搭載しており、変換精度は95%以上に達しています。修正にかかる時間を含めても、従来のキーボード入力の半分以下の時間で記録が完了します。

2. シフト管理:AIが最適シフトを自動生成

Before(従来のやり方)

  • 管理者がスタッフの希望を手動で集約
  • 労働基準法・夜勤上限・有資格者配置などの条件を確認しながら手作業で作成
  • 1回のシフト作成に10〜15時間、修正のやり取りで追加5時間

After(AI導入後)

  • スタッフがアプリで希望シフトを入力
  • AIが法令・配置基準・公平性を考慮して最適シフトを自動生成
  • シフト作成時間を月15時間 → 月3時間(80%削減)

AIシフト管理では、以下の条件を同時に最適化できます。

  • 労働基準法の遵守(連続勤務制限、休憩時間)
  • 夜勤回数の公平な分配
  • 有資格者の配置基準
  • スタッフの希望休との調整
  • 急な欠勤時の代替要員の提案

3. 予約・問い合わせ対応:AI自動応答で電話対応を70%削減

Before(従来のやり方)

  • 受付スタッフが電話で予約対応
  • 1件あたり5〜10分、ピーク時は電話がつながらない
  • 予約変更・キャンセルの連絡が診療時間中に集中

After(AI導入後)

  • AIチャットボット・自動音声対応が24時間予約を受付
  • 予約確認・変更・キャンセルを自動処理
  • 電話対応件数を1日50件 → 15件(70%削減)

導入事例では、患者・利用者側の満足度も向上しています。「電話がつながらない」という不満が解消され、24時間いつでも予約できる利便性が好評です。

4. 申し送り・情報共有:AI要約で引き継ぎミスをゼロに

Before(従来のやり方)

  • 口頭での申し送りに15〜30分
  • 重要な情報が伝わらない、忘れられるリスク
  • 紙ベースの申し送りノートの閲覧が面倒

After(AI導入後)

  • 記録データからAIが自動で申し送りサマリーを生成
  • 「重要度:高」の情報をハイライトして優先表示
  • 申し送り時間を30分 → 10分に短縮、情報漏れを90%削減

AIは時系列の記録データから、状態変化やバイタルの異常値、投薬変更などの重要情報を自動で抽出します。夜勤明けの疲労した状態でも、確実に次の担当者へ情報が引き継がれます。

5. 研修・教育:AIパーソナライズ研修で即戦力化

Before(従来のやり方)

  • OJT中心で指導者の力量に依存
  • マニュアルが更新されておらず実務と乖離
  • 新人の習熟度にばらつきが大きい

After(AI導入後)

  • AIが新人の習熟度を分析し、最適な学習コンテンツを提案
  • シミュレーションベースのケーススタディで実践的に学習
  • 独り立ちまでの期間を平均6ヶ月 → 4ヶ月に短縮

研修指標従来AI活用後改善率

独り立ちまでの期間6ヶ月4ヶ月33%短縮
研修担当者の負担月40時間月15時間63%削減
新人の1年以内離職率25%15%10ポイント改善
マニュアル更新頻度年1回随時自動更新-

AI導入の4ステップ:医療・介護現場に合わせた進め方

ステップ1:現場ヒアリングと課題の数値化(2週間)

「何に一番時間を取られているか」を現場スタッフにヒアリングし、業務ごとの所要時間を計測します。データに基づいて優先度を決定することが重要です。

ステップ2:パイロット導入(1〜2ヶ月)

1つの部署・1つの課題に絞って試験導入します。たとえば、1つの病棟で音声入力AIを導入し、記録時間の変化を計測します。

ステップ3:効果検証と全体展開(3〜6ヶ月)

パイロットの結果を検証し、改善点を反映したうえで他部署に展開します。導入時のポイントは以下のとおりです。

  • 現場スタッフへの丁寧な説明と操作研修
  • 「AIに仕事を奪われる」という不安の解消
  • 段階的な導入で業務への影響を最小化

ステップ4:データ蓄積と継続改善(6ヶ月〜)

AIの精度はデータの蓄積とともに向上します。半年ごとに効果を振り返り、新しい活用領域を検討します。

導入コストの目安は以下のとおりです。

  • 音声入力AI:月額3〜8万円(端末費用別)
  • AIシフト管理:月額5〜15万円
  • 予約チャットボット:月額3〜10万円
  • 総合導入支援:初期50〜100万円

年間の人件費削減効果は300〜600万円が見込まれ、12ヶ月以内に投資回収が可能です。

まとめ:AIで「人にしかできないケア」に集中する

医療・介護現場へのAI導入は、人を減らすためではなく、人がケアに集中するための環境を整える手段です。記録やシフト作成、電話対応などの間接業務をAIに任せることで、スタッフの負担を軽減し、ケアの質を向上させることができます。

AI導入による総合効果の目安は以下のとおりです。

  • 間接業務時間:40%削減(月あたり60〜100時間の創出)
  • スタッフの残業時間:平均月10時間削減
  • 利用者・患者満足度:15〜20%向上

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